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公開時のあるマスコミインタビューで、主演のティモシー・ダルトンは次のように答えました。「ショーン・コネ
リーのドクター・ノオの頃のようなハードさを取り戻したい。スクリーンの向こうから、観客の首根っこをグイグ イと締めつけるような感じを・・・」。前作「リビング・デイライツ」が好評だったダルトン・ボンドの2作目です が、作品のトーンには同じ監督と主演者によるものとは思えないほどの違いを感じます。今回ボンドは「殺し のライセンス」をかなぐり捨てて私怨に走るわけですが、元々ボンドは秘密情報部員の仕事を喜んで遂行し ている訳ではなく、過去には「女王陛下の007」の原作、映画ともに任務に対して不満があれば辞表を出し たりする描写もあります。個人的には「女王陛下の007」とも精神的に密接な繋がりを持つ本作を公開時に はややとまどいを持って見たのですが、時間が経つにつれてリピートして見る回数も多くなりました。「リビン グ・デイライツ」では、あれほど嫌がっていた狙撃(納得行く理由が無い相手に対して銃を向けることは良し としない性格)に対するポリシーは、今回は明確な理由があるためか何のためらいも無くスコープを覗き込 むなど、前作と比較するとたいへん興味深いものがあります。
マイケル・ケイメンによる乾いた音楽世界は、彼が担当した「ダイ・ハード」や「リーサル・ウエポン」とこの映
画との内容がある意味たいへん近いものがあることを物語っています。余談ですが、「ダイ・ハード」でFBI の「ジョンソン・コンビ」を演じたロバート・ダヴィとグランド・L・ブッシュもこの作品で共演していたりして、キャ スティングにおいても、この時期のアクション映画の傾向が先に上げた2作品の影響が色濃いのだと思わせ ます。
また、「死ぬのは奴らだ」でライターを演じたデビッド・へディソンが再び出演して、しかも「死ぬのは奴らだ」
の原作にあった衝撃シーンを忠実に再現したことにも驚かせられたのですが、前作「リビング・デイライツ」で ライターをボンドより若そうな俳優に演じさせたことはどこかに飛んでしまったようですね(笑)。
この作品以後、実際6年間のブランクがあった理由は、イオンプロ(ダンジャック)とMGM/UA映画間の権
利関係についての法廷闘争が主とした理由であったことが後年分かったのですが、大半のファンはそのよう なことも知らずこの「消されたライセンス」が失敗作で、興行収入や評判が芳しく無いことが最大の理由だと 思っていたのでは無いでしょうか?二重の意味で不幸な作品であったかもしれませんが、その後のブロス ナンやクレイグのボンド像にも少なからず影響を及ぼしている作品であり、充分評価に値する作品であると 私は思っています。81年の「ユア・アイズ・オンリー」から5作品連投という、今後も記録は破られる可能性 はまず無いと思われるジョン・グレン監督による、担当作品の原作が「短編・中篇」ばかりで最後はタイトル さえオリジナルというこの「消されたライセンス」まで、007映画の原点への軌道修正とエンタティメントの両 立を目指した功績は高く評価したいです。 ![]() ![]()
前作「リビング・デイライツ」までは全てTVサイズでリリースしたCBS/FOXも、この作品からはワイドスクリ
ーンとなった。これは同時期にMGM/UA HOME VIDEOから続々と過去の007シリーズのワイドスク リーンLDがリリースされたことも一因にあるのかもしれない。とは言え、同社からの007LD発売はこれが 最後となった。消費者の立場から言わせてもらうと、最後まで「不良品(ノイズ)」に泣かされたメーカーであ った(苦笑)。カットシーンについては、「検証」を参照のこと。 ![]() ![]()
MGM/UA HOME VIDEOの007ワイドスクリーンLDが、「ドクター・ノオ〜リビング・デイライツ」まで全
てリリースされてから、少し間を置いて発売された。「黄金銃を持つ男」と同じく、国内盤ワイドスクリーンLD が既に発売されていたので、輸入数も極めて少ないと思われる。 ![]() ![]()
TVサイズながら、前作「リビング・デイライツ」と同じく映像もクリアであるし、後述の「検証」にもあるとおり、
本編はノーカットである。またジャケット内側の解説文も情報内容が充実している。また、解説書の最後に 「次回作はピアース・ブロスナン主演」と明記されているのだが、1990年の時点ではティモシー・ダルトンの 契約もまだ残っていたはずだが、この時点で既に5代目はブロスナンに決まっていたのであろうか? ![]() ![]() ![]() ![]()
販売盤はジャケット背部分に「007」の文字が無く、文字通り「消されたライセンス・ナンバー」であるが、レ
ンタル盤には表記されていたりする。アメリカンバージョンなので、北米盤同様カットシーンがあるのが残念 である。
●この作品は、アメリカのレイティング(審査)で問題になったシーンがいくつかあり、ワイドスクリーンで発
売されたLDは北米、国内盤ともに以下のシーンがカットされている。
@フェリックス・ライターが鮫に足を食いちぎられ、片足となり切断面が見えるシーン(約2秒)
Aミルトン・クレストの頭部が減圧室の中で破裂する瞬間のシーン(約1秒)
Bダリオが麻薬を粉砕する機械に巻き込まれて、体が砕け肉片が飛び散るシーン(約1秒)
Cサンチェスが火だるまになって、苦しみもがくシーン(約3秒)
☆LDの場合、オリジナルから該当シーンをそのままカットしたので、そのシーンの音楽も欠落していた。そのため切
ったことが明らかに分かるのだが、2000年に発売された「特別編DVD」では音楽も再編集され、不自然さが無くなっ た。
☆2006年に発売された「アルティメットDVD」ではノーカット収録である。
☆2003年にWOWOWで放送された際はノーカット・ワイドスクリーンであった。
予告編の内容については全て同じ(DVDにも収録)ですが、音声に顕著な違いが見受けられます。
★CBS/FOX北米盤→画面はTVサイズ
音声は(L)がナレーション、(R)が音楽と効果音
英語圏でないところではナレーションを抜いたり、別言語で吹替えたりするためなのだろうか?
★MGM/UA北米盤→画面はシネマスコープ
音声はナレーション&音楽と効果音のステレオ
★パイオニアLDC国内盤ワイドスクリーン→画面はTVサイズ
音声はナレーション&音楽と効果音のモノラル
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