007v-labo
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増淵健氏の著書「娯楽映画大百科(1975年刊)」の記述に、「スパイ映画が舞台を宇宙に移すと、シリーズ
が終息に向かう」旨の記述があり、具体的に「電撃フリントシリーズ」は2作目で宇宙ロケットに絡む事件を 描いて終了、「マット・ヘルムシリーズ」は3作目で空飛ぶ円盤を登場させ4作目で終わった例を上げていま した。007シリーズは宇宙ロケットの出る「二度死ぬ」の次回作「女王陛下」、そしレーザー衛星兵器の出る 「ダイヤモンドは永遠に」の次回作「死ぬのは奴らだ」で、それぞれ新兵器やギミック等を極力抑えた現実的 なアクションを描いて切り抜けてきたのですが、「ムーンレイカー」の後のこの「ユア・アイズ・オンリー」もそ の一本となるでしょう。007シリーズが他のスパイアクション映画と違い今日まで続いているのは、マイナー チェンジが必ず成功している点であり、その流れの最たるものが「ダイ・アナザー・デイ」の次の「カジノ・ロワ イヤル(2006年)」であったのですが、「ダイ・アナザー・デイ」はそれを狙ってああいう作品になったのかと 考えたものでした(笑)。
さて、このユア・アイズ・オンリーでありますが、何より驚いたのは短編小説原作の細かい点を上手く利用し
たストーリーであり、また「死ぬのは奴らだ」の映画では描かれなかったボートによる海中引き回しシーンを 再現したところには劇場で見て唸ったものでした。あと、ボンドがロックの車を崖から蹴り落とすシーンでは それまでのムーア・ボンドのキャラクターを覆すほどのインパクトがありました。
ビル・コンティの音楽は映画の前半ではややコミカルなアクションが続いているシーンにおいては、彼の持ち
味である「ロッキー」的な快活な音楽が前面に押し出されていて、バリーの007音楽とはかなり違うものを 感じましたが、映画の後半でボンドがコロンボと出会うシーンあたりからはシリアスな描写が多くなるにつ れ、サスペンスフルで重厚なスコアを聞くことができ、中々健闘していたと感じました。 ![]() ![]()
北米盤の初期発売LDとして当時の最新作であったので、当然プリントの状態も良好でありました。当時普
及され始めたドルビーサラウンドデコーダーで、冒頭のヘリコプターアクションのサラウンド音声をを楽しまれ た方も多いのではないでしょうか?
SIDE1とSIDE2の場面切り替え場所が適切でないと思われ、SIDE2冒頭の音楽が切れていたり、エンディン
グの主題歌のフェードアウトも途中で切れていたりと、収録の仕方にもうすこし配慮が欲しかったです。 ![]() ![]()
SIDE3が画質的に有利なCAV収録がされている場合、クライマックスシーンを出来る限り多めに収録(概ね
20分以上)される配慮がされているのが北米盤の特徴であり、美点でもあります。 ![]() ![]() ![]() ![]()
このLDのみ、エンディングにPGの表記が収録されています。
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LDのジャケットデザインは、写真にしてもイラストにしても、ボウガンを持つ女性の股下越しに銃を構えるボ
ンドというアートがつらぬかれていて、こうやって並べてみると壮観だったりします(笑)。
●映画のナイト(夜間)シーンで、実際は昼間に撮影されたものにフィルター等の効果をかけて夜間に見せ
ている例はたくさんあり、007映画でもいくつか見られるが、この「ユア・アイズ・オンリー」でボンドとコロン ボ一派がクリスタトスの港のアジトを急襲するシーンの設定は夜明け近い夜間で、ボンドが石段を登ってロ ックを崖まで追い詰めるあたりが夜明け手前という時間の流れのようである。しかしながら、映像ソフトによ ってそのシーンの明るさにはかなり違いがある。以下、LDソフトとDVDの違いを検証してみた。
☆LDの場合はすべて、ロックの車が時計塔を通り過ぎるあたりから、撮影された日中そのままの明るさである。
☆2000年に発売された「特別編DVD」では、多少は明るさは抑えられているようだが、ほとんど日中と変わらない明
るさである。
☆2006年に発売された「アルティメットDVD」では、かなり濃いフィルター処理がされてあり、「夜明け前」という本来
意図された明るさになっているが、今までの映像ソフトに見慣れた目で見ると、落下した車から放り出されるロックが 良く見えなかったりして、かなり見づらかったりする。
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