007v-labo
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実に6年という007映画史上最大のブランクを経て製作された本作は、リニューアルとも言えるほどの変貌を
遂げた。この長期ブランクの間には、本当に様々な噂が飛び交ったものだった。ファンは「ありえない」主役 キャスティングの予想報道に苦笑し、またシリーズ続行不能の不安に怯えたりもした。
さて、完成作品で見たボンドはたいへん孤独な男であった。タイガーヘリ強奪を阻止しようと飛び出したもの
の取り押さえられたり、本部に戻れば新任のMやマニペニーに冷たくあしらわれたり、CIAのジャック・ウェイ ドはムードメーカー以上の役割でまるで頼りにならないと散々である。唯一の頼れる相棒は、事件に偶然巻 き込まれた二級プログラマーのナタ−リヤだけという具合である。また、この映画ではボンドのライフスタイ ルに対して揶揄(皮肉)するセリフがたいへん多く、特に006とのやりとりはほとんど漫才と化している。こ のシーンなどは、欧米の劇場では観客が大爆笑だったと推測するが・・・
そして作品を見終わって何よりも驚いたのがエリック・セラによる音楽であった。公開前にサントラCDは何度
か聞いて、おおよその内容は把握していたつもりだが、オープニングのガン・バレルシーンから「何だ、これ は?」であった。そして彼の音楽の方法論にかなり違うものを感じたのは、プレタイトルでボンドが落下する セスナ機にオートバイでジャンプして落下しつつ飛び移るシーンで、何と音楽がフェードアウトし、主題歌ま で無音楽になってしまうのである。例えばジョン・バリーであったら、セスナに乗り移るところまではたたみか けるようなオーケストレーションで危機感を煽り、セスナに乗り移りコントロールを取り戻して機首を上げると ころでは、ファンファーレ調の音楽で盛り上げるのではないだろうか?好例としては、バリーではないがマー ビン・ハムリッシュが音楽担当をした「私を愛したスパイ」のプレタイトルでのパラシュート落下シーンがシチ ュエーション的にも似ているので、比べてみればお分かりになると思う。バリーは同時期にシルベスター・ス タローン主演のアクション映画「スペシャリスト」の音楽を担当しているが、このサントラでは007で使えそう な音楽がいくつかあったりするので、私はサントラCDを聞くたびに「ああ、これが007映画だったら良いのに もったいない」とひとり嘆いていたりする(笑)。
これに加えて、サントラCDの10曲目‘A Pleasant Drive in St.Peteresburg’はタイトルからして本来、戦
車のチェイスシーンにかかるべきものであるが、完成作品では別人のアレンジによるジェームズ・ボンドのテ ーマ が使われてしまっている。この‘A Pleasant Drive in St.Peteresburg’は、公開当時の日本のテレ ビのバラエティ番組で頻繁に使われていて、「別の意味で役に立っている」珍妙な現象に苦笑したものだっ た。後年、「特別編DVD」のメニュー画面のBGMに使われたのはせめてもの幸運か(汗)。セラ氏は「スタッフ とのコミュニケーションをもっととるべきであった」と述懐し、評判が芳しくなかったことを分かっていたとも聞く が、DVD等でのインタビュー映像も無いことから、この仕事については触れられたくないのかもしれない。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() る。 ![]() ![]()
新作において北米盤のLDの発売が遅いことは異例かと思うが、これだけの特典映像が収録されたことを見
ればそれはうなずける。特に‘THE WORLD OF 007’という45分弱のドキュメンタリーでは、過去のシリー ズ出演者のインタビューで現在の姿を見ることができたりと、たいへんお得な内容のLDであった。これらの 特典映像はDVD時代を睨んだものだったかは確かではないが、最初に発売されたDVDでは反映されず、 2000年に発売された「特別編DVD」にその殆どが収録されることとなった。
現在DVDに収録されているプロデューサーと監督の対談解説音声は、このLDのために製作されたものであ
るが、ドルビーサラウンドAC-3(ドルビーデジタル)の唯一の空き音声のアナログ左チャンネルを使用して いるため、アナログ音声専用プレイヤー使用者は本編の音声を全く聞くことが出来なくなってしまっている。 国内盤ではこのような仕様にすることはまずありえなかったはずである。
※北米盤では、他にもDTS音声バージョンやTVサイズ盤も発売されたらしい。
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北米に先駆けて発売された国内盤は、特典映像は予告編のみと内容的には寂しいものの、初リリースから
ワイドスクリーン仕様で、映像はTHXと90年代後半のLD成熟期らしい高品質な内容であった。90年代前 半には「日本語吹き替え音声版LD」もメジャー系新作ではかなりのリリースがあったが、この時期は過渡 的にそれが無くなりつつあったので、本作も発売されることは無かった。また、この年はDVDの発売が始ま り、新しい007映画の幕開けは、映像ソフトの新時代のそれと奇しくも同じ時期であった。
※レンタルLD盤は当時のカタログにラインナップされていたが、小生は未確認である。
●ゴールデンアイや、一部の007作品ではアルティメットDVDの画像がアップ気味(つまりオリジナルより上
下左右が切られた画面)で収録されているとの情報を聞き、検証してみた。確かに画面の殆どがそのような 状態で、場面によっては情報量が減ってしまっていたりして見づらかったりと何故このようにしたのか理解に 苦しむ。その他、アルティメットDVDでは「字幕の内容が特別編と違う」ところや、「タイトルクレジットの文字 位置がかなり違う」、「主題歌、エンディングの和訳字幕が無い」などの違いがある。 ![]()
特別編(右)ではゼニアの鼻の下が白く欠けている部分があるが、アルティメットでは修正されている。しか
しながら、1995年製作の映画でこのようなマスターを使うこと自体が問題である。 ![]()
ボンドがカメラでマンティコア号の船名を見るシーン。カメラのズーム機能表示(右側)が全く映っていない。
このような画面上の文字表示が欠けているシーンはたいへん多く、ボンドがタイガーヘリに閉じ込められた 際に、パネルに表示されたカウントダウンの秒数が見えないという困ったことにもなっている。
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